通常、アリは他の種のコロニーと敵対し、同じ巣で暮らすことはできません。しかしこの写真では2種のアリが同居できています。これはアメイロケアリ(働きアリは黄色、女王は茶色で大きい個体)がトビイロケアリ(焦げ茶色)に寄生しているのです。
女王は焦げ茶色で体長7~8mm、働きアリは黄色で体長4~4.5mm。コロニーの規模は数千匹になる。樹木の根元に巣をつくり、働きアリはトビイロケアリほど地表に出てこない。
アメイロケアリは6~8月の夕方に結婚飛行を行います。交尾を終えたアメイロケアリの女王は翅を落としたあと、トビイロケアリの働きアリを1匹あごでくわえてトビイロケアリの巣に侵入します。うまくばれることなく侵入に成功すると、元からいたトビイロケアリの女王は殺されます。トビイロケアリの働きアリは気づかずにアメイロケアリが産んだ卵を育てていくため、トビイロケアリのコロニーにはアメイロケアリの働きアリが増えていきます。しばらくするとトビイロケアリのコロニーは完全にアメイロケアリのコロニーに置き換わってしまいます。
アリには、女王が他の種のアリの巣に侵入し、元から居た女王を殺して乗っ取る種がいます。このような寄生方法は一時的社会寄生と言い、日本では10種以上のアリがこれを行います。
ほとんどの場合、交尾を終えて侵入を試みた女王は働きアリに殺されて失敗しまいます。例えば、アメイロケアリの結婚飛行があった日にトビイロケアリの巣の周りを見てみると、たくさんのアメイロケアリの女王がトビイロケアリの働きアリに捕まって攻撃されているのを見ることができます。
なぜこのようにほとんど失敗する危険を冒してまで寄生を行うのでしょうか。それは、一度寄生に成功すれば数千匹の働きアリという労働力をいきなり得ることが出来るからです。大量の働きアリがいると、餌を多く集めることができ、多くの幼虫を育てることができます。女王は自分で子育てを行う必要はなく、最初からたくさん卵を産むことに専念できるようになります。このようにアメイロケアリは、トビイロケアリが数年かけて増やした働きアリを横取りすることで、一気に大きいコロニーを得ることができるのです。